オンライン診療の活用方法は、医療機関それぞれが持つ課題や、どうしたいかによって変わります。どんな場面で効率化が図れるのかを実際にオンライン診療を導入されている医療機関の事例とともに紹介します。
はじめに
オンライン診療は患者さまにとっては非常に効率的なサービスです。自宅からでも受診が可能で、移動の時間や待ち時間もないメリットがあります。一方、医療機関にとっての効率はどうでしょうか?オンライン診療は、何か手間が増えたりして医師やスタッフの負担になるのでは…と悩んでいる方向けに、本記事では、患者さまの診療をスムーズに行うため、および集患(集客)のために、オンライン診療を有効活用する方法について考察します。
手間や負担は増えるのか
オンライン診療を始める際に、具体的にどんな手間が増えるのかを見ていきたいと思います。まずはオンライン診療システムを導入する時にシステムに慣れる手間があります。初めからすぐにオンライン診療の予約がたくさん入るわけではないので、システム上の操作を覚えるのに苦労する方も多いようです。
次にオンライン診療に特有の手間としては、オンライン診療後に患者さまの希望された薬局に処方箋をFAXする(自動で送信できる機能を備えたオンライン診療システムもあります)手間と、処方箋原本を後日薬局へ送付する手間があります。薬局ごとに送付が必要なのでオンライン診療の数が増えるとその分手間が増えるため、スタッフにとっては負担になることが多いようです。ただし、電子処方箋の利用によりFAX送信や原本送付の必要が無くなるため、電子処方箋のシステムを採用してその手間を減らし、オンライン診療の件数をもっと増やそうと考えている先生も多いようです。
集患(集客)の効率化
オンライン診療特有の手間が増えるかもしれないのに、なぜオンライン診療を導入している医療機関が増えているのでしょうか。その1つに集患(集客)の効率化があります。患者さまが初めて受診する医療機関を選ぶ際、参考にする一つがホームページです。ホームページからどういった情報を得ているかというと、まずは医師の印象や専門分野、そして医療機関の外観・内観、営業時間などです。さらにはその医療機関の取り組みを参考にしている方もいます。その中で「オンライン診療」や「電子処方箋」など最新のものを積極的に医療に取り入れていることは医療機関のイメージ向上にもつながります。
また、今後それらのキーワードで検索する方が増えていくとWEBの検索画面では自然に検索順位が上がってくる可能性もあるため、宣伝効果の意味でも効率的になっていくと考える先生もいらっしゃいます。オンライン診療という選択肢を増やすことで新患を増やしたい、若い患者層へのアプローチにより長く通ってもらえる患者さまを増やしたいと思っている方は、オンライン診療の導入を検討しても良いのではないでしょうか。
すきま時間の活用
オンライン診療を導入したいがいつすれば良いのか分からないと思う方もいらっしゃるかもしれません。
オンライン診療を導入しているクリニックに話を聞いてみると、比較的空いている曜日や時間を思い切ってオンライン診療の時間に充てているところがあります。また閉院直後や、午前と午後の診療の間で30分だけ枠を作っている先生もいらっしゃいます。
オンライン診療は外来と違って受付や看護師を必ずしも必要としないため、医師1人でも対応は可能です。中には外来の休診日をオンライン診療の日として医師1人で対応し、オンライン利用の患者さまを少しずつ増やしている先生もいらっしゃいます。
現在、オンライン診療は医療機関の施設外でも可能となっているので、在宅往診をされている先生の中には、往復の車の中でオンライン診療を実施する方もいらっしゃいます。オンライン診療はちょっとした合間に行うこともできるため、改めて手が空いている時間がどこかにないかを見つめ直すことも大事と言えるでしょう。
先に示したようにシステムに慣れる手間はありますが、スタッフがいなくても実施可能であることから、医師自身がシステムを使うことができればスタッフがシステムに慣れる必要は無く、スタッフの入れ替わりのために困ることもありません。オンライン診療にかかる時間やシステム対応に関しては、スタッフの負担を増やさずに効率的に診療を増やすことが可能となります。
処方箋原本の郵送などの手間は残りますが、外来とオンラインとをうまく組み合わせればスタッフが空いている時間を有効活用することも可能なので、業務負荷を分散することにもつながります。
オンライン診療での効率化
オンライン診療は、患者さまの診察室への入退室時のアイドリングタイムもなく、前後の消毒などの対応も不要です。パソコンのシステム上の切り替えを行うだけなので時間の削減につながります。
また、オンラインでの問診対応が可能であると、事前に問診票の記載も完了しておりスムーズに次の診察に移ることができます。現在は初診からオンライン診療をすることが可能になっていますが、新患の場合は外来と同様に時間をかける必要があるのに対し、症状が安定している患者さまであればより効率的に対応が可能となります。
また、症状が安定している患者さまで検査などの必要が無ければ、外来診療の間にたまにオンライン診療を挟むことにより受診継続率が上がる傾向があります。検査をした場合も、結果報告が次回だと間隔が空いてしまいリアルタイムでの指導ができませんが、オンライン診療を活用すれば次回の来院までの間に検査結果を伝えることができます。
オンライン診療はまだ国内においては医療機関だけでなく患者さまにとっても認知が進んでおらず課題もありますが、メリットも非常に多いサービスです。今後「オンライン診療」が一般的になっていくと、さらに業務や集患(集客)の効率化が期待できることになるでしょう。