オンライン診療は、リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む情報通信手段を採用することにより、対面診療に代替し得る程度のものである必要があるため、メールやチャットのみによる診療は認められていません。
本記事では、開業医やクリニック勤務の医師の皆さまへ、オンライン診療の現状と役割、法的留意点などをご紹介します。
オンライン診療システムの導入を検討されている方は、ぜひご覧ください。
オンライン診療の現状と役割
現在、オンライン診療は医療の重要な一部となりつつあります。
患者さまは病院に行かずに、自宅や職場から手軽に医師とコミュニケーションを取ることができるため、利便性が高く注目されています。
しかし、オンライン診療は、医療上の必要性、安全性、有効性の観点からいくつかの制限があり、注意が必要です。
特にチャットの使用が関わる注意点について、厚生労働省「オンライン診療における不適切な診療行為の取扱いについて」(第三 関係法令・指針2オンライン診療の適切な実施に関する指針(平成30年3月30日付け医政発0330第46号厚生労働省医政局長通知の別紙)(抄)Ⅴ1(6)②ⅱ)より一部抜粋します。
オンライン診療では、可能な限り多くの診療情報を得るために、リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む情報通信手段を採用すること。直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には補助的な手段として、画像や文字等による情報のやりとりを活用することは妨げない。ただし、オンライン診療は、文字、写真及び録画動画のみのやりとりで完結してはならない。
このように、オンライン診療前後、オンライン診療中にチャットを活用して情報収集することは問題ございません。
ただし、オンライン診療は、ビデオ通話などのリアルタイムの視覚・聴覚の情報が含まれる情報通信手段を用いなければならないこと、医師が患者さまの状態に関する情報を十分に得られないと判断した場合には、速やかに対面診療に切り替えなければならないことには注意が必要です。
法的留意点
オンライン診療を実施するにあたり、情報通信機器を用いた診療への考え方を整理・統合し、適切なルール整備をすることが求められています。
特にチャットの使用が関わる法的留意点について、医師法(第一章 総則 第二十条)より一部抜粋します。
医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付してはならない。
上記、医師法第20条に違反するのではないか、という懸念は、厚生労働省「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について 」(健政発第1075号 1基本的考え方)より違反ではないことが明確化されています。一部抜粋します。
医師法第20条等における「診察」とは、問診、視診、触診、聴診その他手段の如何を問わないが、現代医学から見て、疾病に対して一応の診断を下し得る程度のものをいう。したがって、直接の対面診療による場合と同等ではないにしてもこれに代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法第20条等に抵触するものではない。
つまり、オンライン診療は医師法第20条には違反しませんが、チャットのみでオンライン診療することは難しく、実際に患者さまと対面でコミュニケーションすることが求められています。
適切な診察方法を確認し、医師法第20条や厚生労働省の指針に違反する疑いのある診療行為をしないよう注意が必要です。
こんな時どうする?
厚生労働省が発出する「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を正しく読み解くにあたって、特にチャットの使用に関わる疑問と回答を「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A」より一部抜粋いたします。
Q. オンライン診療はチャットなどで行うことは可能ですか。
A. 本指針において対面診療の代替として認められているオンライン診療は、「リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む情報通信手段」を採用することにより、対面診療に代替し得る程度のものである必要があるため、チャットなどのみによる診療は認められません。
Q. 本指針は、保険診療のみが対象ですか。
A. 本指針は、保険診療に限らず自由診療におけるオンライン診療についても適用されます。
Q. 診療前相談を効果的かつ効率的に行うため、診療前相談に先立って、メール、チャットその他の方法により患者から情報を収集することは差し支えありませんか。
A. 差し支えありません。なお、その場合においても診療前相談は映像を用いたリアルタイムのやりとりで行ってください。
Q. 疾患・病態によって、オンライン診療により、対面診療と大差ない診療を行うことができる場合は、オンライン診療のみで治療が完結することがあり得ますか。
A. 触診等を行うことができない等の理由により、オンライン診療では、診療に必要な情報が十分得られない場合もあることから、オンライン診療で得られる情報のみで十分な治療ができるかどうかは個別に判断されるものと考えています。
また、同じ疾患名でも個々の患者の状態は様々であることから、疾患名だけで判断することは困難です。
したがって、オンライン診療は対面診療と適切に組み合わせて行うことが基本です(オンライン診療のみで必要な情報が得られ、結果として、対面診療を行うことなく治療が完結することはあり得ます)。
なお、医療現場におけるオンライン診療の活用については、一般社団法人日本医学会連合において検討していただける予定であり、厚生労働省としても、当該検討結果や内外の診療実績や論文等を踏まえ、継続的に検討していく必要があると考えています。
Q. 患者が身分証明書を保持していないなど、本指針に沿った本人証明を行うことができない場合はどうすればよいですか。
A. オンライン診療の場合には、直接の対面による本人確認ができていないことから患者の顔写真付きの身分証明書を確認することが望ましいです。
顔写真付きの身分証明書がなく、2種類又は1種類の身分証明書を用いた本人証明を行うこともできない場合には、患者の事情を考慮して身分証明書に準ずる書類を確認する等の対応を行ってください。
【参考】厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」
まとめ
チャットのみでオンライン診療を完結させることはできませんが、オンライン診療前後、オンライン診療中にチャットを活用して情報収集することは問題ございません。
オンライン診療は、時間と場所にとらわれずに医師と患者さまがコミュニケーションを取ることができるため、患者さまのプライバシー保護や、効率的な診療の実現など、さまざまなメリットがあります。
しかし、オンライン診療を実施するためには、適切な設備・ソフトウェアの導入、スタッフのトレーニングや準備の他に、法的な留意点の把握が必要です。
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