へき地での医療アクセス改善を目指し、オンライン診療の可能性が注目されています。
この記事では、厚生労働省が推進するへき地オンライン診療に関する方針や、看護師の介入、遠隔地域への医療アクセス改善と密接な連携について解説します。
へき地オンライン診療が、多くの地域や患者さまの医療アクセス問題を解決するための重要な取り組みであることがわかりますので、ぜひご一読いただければと思います。
へき地におけるオンライン診療の普及を目指す厚労省の方針
へき地の定義について、厚生労働省「へき地の医療について」(P.4 へき地保健医療対策におけるへき地の定義)より一部抜粋します。
へき地とは、「無医地区※1」、「準無医地区※2(無医地区に準じる地区)」などのへき地保健医療対策を実施することが必要とされている地域
※1)無医地区とは、原則として医療機関のない地域で、当該地区の中心的な場所を起点としておおむね半径4kmの区域内に50人以上が居住している地区であって、かつ容易に医療機関を利用することができない地区
※2)準無医地区とは、無医地区ではないが、これに準じて医療の確保が必要と都道府県知事が判断し、厚生労働大臣が適当と認めた地区
そうしたへき地に対して、厚生労働省は都道府県単位で設置された「へき地医療支援機構」を中心に、行政、へき地で勤務する医師、へき地医療に協力する施設・機関、そしてへき地の住民がそれぞれ連携・協力し、かつ他の都道府県の先進事例にも学びながら、効果的・効率的で持続可能性のあるへき地への医療提供体制の構築を行うことを目標としています。
【参考】厚生労働省「へき地の医療について」(P.7 へき地における医療の体系図)
へき地への医療提供体制の構築の中で、特にオンライン診療の普及が期待されています。その理由として、まずへき地では医師確保が難しいため、遠隔地から医師が診察を行うことで患者さまの医療ニーズに応えられます。
厚生労働省ではオンライン診療の実用化・普及を目的とした事業を実施することで、地域の医療機関や介護施設と連携し、患者さまに適切な治療が受けられるように努めています。
令和4年10月26日 第16回 第8次「医療計画等に関する検討会」の遠隔医療の活用についての論点は次の通りです。
限りある医療人材の効率的な活用や有事対応の観点から、へき地医療におけるオンライン診療の有用性が示唆されていることを踏まえ、自治体によるオンライン診療を含む遠隔医療の導入支援を促してはどうか。
上記論点を踏まえた遠隔医療の活用の方向性は次の通り決定しました。
都道府県においてオンライン診療を含む遠隔医療を活用したへき地医療の支援を行うよう、へき地の医療体制構築に係る指針で示すとともに、遠隔医療に関する補助金による支援や、好事例の紹介等による技術的支援を行っていく。
遠隔地域への医療アクセスの改善には、密接な連携が不可欠です。オンライン診療を活用すれば、遠隔地でも医療機関と患者さまが容易につながることができます。また、医療機関と患者さまの連携を深めることで、高齢化が進み、介護が必要な人が増える中での地域医療の充実が期待されています。
オンライン診療への規制緩和の波及効果
オンライン診療を活用することで、地域の医療アクセスが向上します。これにより、地域で悩む患者数の減少に貢献できます。
規制緩和が進むことで、オンライン診療が一層普及し、医師と患者さまの負担軽減が期待できます。また、遠隔地やへき地での医療確保も進み、地域医療の質が向上するでしょう。
オンライン診療の拡大に伴い、厚生労働省や関連機関の支援や連携が充実し、医療分野の情報提供が円滑になります。さらに、患者さまに対する情報のアクセス性も向上し、適切な診療が受けられるようになります。
ただし、オンライン診療にはセキュリティやプライバシーの課題もあります。この点に留意しながら、規制改革が進むことが望まれます。
通所介護事業所や学校でのオンライン診療の実現
内閣府により、オンライン診療を受診することが可能な場所は、「医療提供施設」「居宅等」のいずれかであるとされています。また、療養生活を営むことができる場所や患者さまの所在として認められる例については、下記の通り記されています。
療養生活を営むことができる場所
オンライン診療であるか否かにかかわらず、既に、患者及びその家族等の状態や利便性等を勘案した判断を行っている
患者の所在として認められる例
患者の日常生活等の事情によって異なるが、患者の勤務する職場も療養生活を営むことのできる場所として認められうる
【参考】内閣府「オンライン診療を受診することが可能な場所について」(資料2-1 P.1)
オンライン診療の普及により、通所介護事業所や学校でも診療が可能になります。これによって、高齢者や子どもたちの健康・医療のアクセスが向上するでしょう。
具体的には、通所介護事業所でのオンライン診療を活用することで、医師の訪問が減り、医師の負担が軽減されます。また、学校では、オンライン診療を用いた遠隔医療相談が可能となり、生徒の健康管理が効率的に行えます。
これらの取り組みが進むことで、地域医療の質が向上し、患者数の減少に悩む医師にとってもメリットが大きいでしょう。
ただし、事業所自らがオンライン診療を行う場合は診療所開設の手続きが必要です。
地域医療支援ネットワークの拡大と看護師の活用
オンライン診療の普及に伴い、地域医療支援ネットワークが拡大し、医師や看護師との連携が強化されます。看護師の活用により、患者さまへのアプローチがより効果的になります。
厚生労働省は、患者さまが看護師等といる場合のオンライン診療について「D to P with N」と称して推進しています。オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会の資料「D to P with N (患者が看護師等といる場合のオンライン診療)」(第3回 資料4)より一部抜粋します。
在宅医療の現場等においては、既に訪問看護等の際に、D to Pと訪問看護の組み合わせによるオンライン診療が行われているという実態があるため、本指針における位置付け、実施時の留意事項、医師が看護師等に対して指示することが可能な診療の補助行為等について整理・検討することとする。
続けて、オンライン診療の指針の対象か否かについては下記の通り述べられています。
現行の指針上、看護師等の診療の補助行為等について、「医師が看護師等の医療従事者に対してオンラインで指示を行い、その指示に従い当該医療従事者が診療の補助行為等を行う場合は、本指針の対象とはしない」とされており、特段の規制はかかっていないもの。これは、医師と患者が直接オンラインで対面しておらず看護師等を介して診療の指示等のみを行う場合を念頭に置いているが、今回検討の対象とするDtoPwithNについては、医師と患者が直接オンラインで対面している場合を想定しており、指針の対象とすべきと考えられる。
さらに、「D to P with N」で実施可能な診療・診療の補助行為については下記の通り述べられています。
医師の指示による診療の補助行為の内容としては、オンライン診療を開始する際に作成した診療計画に基づき、予測された範囲内で診療の補助行為(点滴や注射等)が行われるのが望ましい。
オンライン診療を行った際に、予測されていない新たな症状等が出現した場合において、医師が看護師等に対し、診断の補助となり得る追加的な検査(血液検査や尿検査等)を指示することは可能である。ただし、その検査結果等を踏まえ、新たな疾患の診断を行い治療等を行うのは、オンライン診療ではなく対面診療によるべきである。
医師と看護師が連携を図り、オンライン診療と対面診療を組み合わせるなどの適切な医療体制を確保することが重要です。
オンライン診療の現状と改善策
オンライン診療は、地域や患者さまの利便性を向上させる医療の形態です。しかし、現状では、運用面での課題があります。その理由は、厚生労働省が規制緩和を進めているものの、全国的に一貫した方針がなく、実際にオンライン診療が導入されている地域は限られています。
具体的な改善策としては、まず厚生労働省がオンライン診療推進の指針を明確にし、医師や医療機関に対して支援を行うことが重要です。
さらに、病院や診療所がオンライン診療を実施する際に必要な機器や通信環境を整え、安全なオンライン診療を提供できる体制を確保することが求められます。
遠隔診療を活用した医療機器の進化
遠隔診療の普及に伴い、医療機器も進化を遂げています。これにより、患者さまのご自宅で適切な医療サービスを受けられるようになっています。具体例として、患者さまがオンラインで医師と相談しながら、ご自宅の医療機器を使用して健康状態をチェックできる状況が実現しています。
また、遠隔診療に対応した医療機器は、へき地や高齢者が多い地域での医療提供にも活用されており、医療の質の向上に貢献しています。しかしながら、医療機器の進化に伴うコストや設置場所の確保が課題となっており、今後はこの部分にも対策が求められます。
オンライン診療の欠点と解決方法
オンライン診療には欠点も存在します。その最たるものが、対面診療でないため、患者さまと医師の距離感が生まれやすいことです。具体的には、オンラインでは患者さまの症状を直接観察できないため、診断が難しいケースがあります。
解決方法としては、オンライン診療と対面診療を適切に組み合わせ、遠隔でのみ対応が難しい症状に対しては、適切なタイミングで対面診療を実施することが求められます。医師が連携してより適切な診断や治療法を検討することが重要です。
日本のオンライン診療普及の課題と今後の展望
日本のオンライン診療の普及を阻む課題を克服するためには、今後さらなる政策や法制度の整備が求められます。
展望としては、オンライン診療がますます普及し、地域や患者さまのニーズに応じた医療が提供できるようになることが期待されます。特に、へき地や高齢者が多い地域での医療提供や、感染症などの予防・対策に役立つことが期待されています。今後は、オンライン診療に対する医師や医療機関の理解や技術の進歩が、日本の医療に大きな変革をもたらすことでしょう。
オンライン診療を利用する患者さまと医療機関の声
オンライン診療の利用が広がり、患者さまと医療機関の双方から多くの声が寄せられています。
患者さまの声
患者さま側は、遠隔地域や高齢者、介護が必要な方々が、医療機関へのアクセスが困難な場合でも、オンライン診療を利用することで健康維持や病気の管理が容易になり、通院の負担が軽減される点が評価されています。
また、感染リスクの高い状況では、オンライン診療が診察や処方箋の発行を安全に行えることから高い評価を受けています。
医療機関の声
医療機関側からも、オンライン診療の利点が挙げられています。へき地や地域密着型の診療所においては、オンライン診療を活用することで、より広範囲の患者さまに対応可能となります。さらに、医師や看護師といった人的資源の確保にもつながり、連携や支援の手厚い医療提供が実現されるようになります。
遠隔地域の医療現場からの意見と提言
遠隔地域の医療現場からは、オンライン診療の導入に関する意見や提言が寄せられています。例えば、医療機関のインフラ整備や通信環境の向上、医師や看護師の研修プログラムの充実などが求められています。
また、遠隔地域でも安定した医療サービスを提供するためには、厚生労働省や地域の行政機関との連携が不可欠です。特に、遠隔地域においては、患者さまが受診を希望する医療機関へのアクセスが難しいため、オンライン診療を活用した医療連携が必要となります。
さらに、遠隔地域においては医療機関が限られているため、オンライン診療を活用することで地域に根ざした医療サービスの提供が可能となります。
まとめ
オンライン診療は、患者さまと医療機関双方にメリットがあることがわかりました。遠隔地域や地域密着型の診療所においては、患者数の確保や医療連携の強化に寄与し、更なるサービス向上が見込まれます。
ただし、運用に関する課題も存在し、個々の対策や制度改革が求められています。今後もオンライン診療の活用と普及が期待される中、その効果を最大限引き出すために、医療機関や行政機関と連携しながら取り組むことが求められます。
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