2025.12.23|更新日:2025.12.23オンライン診療医療関連ニュース

医師が知っておくべき遠隔モニタリング加算のすべて:算定・点数・施設基準徹底解説

医療現場では、診療所・クリニックを経営する医師の皆さまが、遠隔モニタリング加算の理解と活用を求められる機会が増えています。これは在宅療法の需要増加と、診療報酬改定による在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)や在宅酸素療法の患者管理方法の大きな変化に起因します。遠隔モニタリング加算を適切に算定するためには、基準や対象疾患、必要な機器・通信環境、報酬点数、オンライン診療サービス選定など、多岐にわたる内容を正確に把握しておく必要があります。本記事では、制度概要から算定方法、加算対象患者・疾患の一覧、必要な体制・施設基準、さらには日常運用での注意点までを論理的に整理して解説します。遠隔モニタリング加算に関心のある医師の皆さまにとって、診療の質向上と、煩雑化する在宅医療における経営安定のための実践的な知識が得られる内容です。
※記載の点数は2025年12月時点の情報であり、診療報酬改定等により変更される可能性があります。詳細については、厚生労働省の最新の点数表や告示等をご確認ください。

日本調剤では、オンライン診療の導入を検討されている方に向けた
「オンライン診療導入ガイド」をご用意しております。

遠隔モニタリング加算制度とは?医療現場での意義と導入背景

最新の遠隔モニタリング加算制度は、情報通信機能を備えた機器を用いて、患者さまの状態を遠隔でモニタリングし、必要に応じて指導や管理を行った医療機関が診療報酬を算定できる仕組みです。
導入の背景には、高齢化社会における慢性疾患患者の増加や、医療資源の効率的活用といった社会的要請があります。特に、CPAPや心臓ペースメーカー管理などが代表的であり、これらの療法を継続的に受ける患者さまの状態把握と適切な指導管理を遠隔から行う体制が求められています。

【参考】厚生労働省「横断的事項(その3)(ICTの利活用②、情報共有・連携②)」より

遠隔モニタリングの活用により、医師や医療従事者は患者さまの状態変化に迅速かつ的確に対応でき、重症化予防や迅速な疾病管理が可能となります。さらに、患者さまにとっては対面受診の負担軽減にもつながります。医療現場におけるこの制度の活用は、医療サービスの質向上と、持続可能な医療体制の構築に大きく寄与することが期待されています。
ただし、制度導入には該当機器の利用に加え、情報管理の徹底、患者同意、および所定の手続き(届出等)が重要となります。診療所やクリニック経営者は、加算の算定要件を正確に把握し、適切な対策を講じることが必要です。

2022年診療報酬改定による加算内容と変更点を徹底解説

2022年の診療報酬改定では、遠隔モニタリング加算に関する点数、適用範囲、および算定の必要条件が大きく見直されました。最大の変更点は、情報通信機器を活用した患者管理の推進、すなわち特定疾患管理における遠隔モニタリングが診療報酬体系に本格的に組み込まれたことです。改定前は一部療法に限定的だった適用範囲が、CPAP、心臓ペースメーカー管理料、在宅酸素療法など、複数の在宅医療領域へ拡大しました。
具体的な改定内容として、医科点数表に新たな加算項目が設けられ、必要な届出、機器の要件、そして患者さまへの説明と同意取得の義務が明確化されました。また、患者さまの状態変化をリアルタイムで把握し、必要時に速やかに指導管理する体制の整備が強く求められています。これらの変更により、遠隔での患者対応の診療報酬上の意義が明確になり、医療機関における管理の効率性と患者満足度の向上が期待されています。制度運用にあたっては、厳格なルール遵守と、適正かつ透明な加算算定の実現が求められます。

【参考】厚生労働省「令和4年度診療報酬改定について

2024年(令和6年度)診療報酬改定:最新の変更点と新規加算

遠隔モニタリング加算の基本的な枠組みは2022年度改定で確立されましたが、2024年度(令和6年度)改定では、既存の管理料の評価の見直しに加え、新たな管理料への適用が拡大されました。注目すべき変更点は以下の通りです。

  • 新規対象管理料の追加:
    在宅血液透析指導管理料に、遠隔モニタリング加算(115点/月)が新設されました。これにより、遠隔管理の適用範囲が、より専門性の高い在宅医療分野へ広がりました。
  • 既存加算の評価の見直し:
    心臓ペースメーカー等指導管理料については、ベースとなる指導管理料の点数自体が見直されたほか、遠隔モニタリング加算の点数(260点/月、480点/月)と算定期間(11か月)の適用が改めて確認されました。
  • 管理要件の強化:
    情報通信機器を用いた指導管理において、患者さまの状態変化に迅速に対応する体制の重要性が改めて強調されました。

これらの変更により、遠隔モニタリングの重要性と適用領域が一段と高まり、医療機関には最新の要件に基づいた運用の徹底が求められます。

【参考】厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について

遠隔モニタリング加算を算定できる疾患と対象患者一覧

遠隔モニタリング加算を算定できる代表的な疾患と対象療法は以下の通りです。

  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS):CPAP(在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料)
  • 不整脈、重症心不全など:心臓ペースメーカー管理(心臓ペースメーカー指導管理料)
  • 呼吸器疾患など:在宅酸素療法(在宅酸素療法指導管理料)

遠隔モニタリング加算は、すべて「対面診療を実施しない月に行った管理」を報酬の対象としますが、その請求を行うタイミングに以下の違いがあります。

  1. 対面診療を実施した月にまとめて請求するケース
    ・心臓ペースメーカー等指導管理料
    ・在宅酸素療法指導管理料
    これらの加算は、対面診療を行った月に、その間に遠隔管理を行った月数分を合算して請求します。
  2. 対面診療を実施しない月に都度請求するケース
    ・在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料(CPAP)
    CPAPの遠隔モニタリング加算は、対面診療を行った月ではなく、遠隔管理を行った月(非対面月)に単月で都度請求を行います。

したがって、特にCPAPの請求タイミングが他の在宅管理料とは異なるため、請求漏れや請求誤りに注意が必要です。

遠隔モニタリング加算の仕組みと診療報酬点数の詳細内容

遠隔モニタリング加算は、医療機関が患者さまの状態を情報通信端末等で継続的に把握し、適切な時期に必要な指導・管理を行った場合に算定できる仕組みです。点数設定は、加算対象となる基礎療法(例:CPAP、在宅酸素療法、心臓ペースメーカー管理等)ごとに異なり、各療法の管理料へ追加する形式で月ごとに算定されます。算定にあたり、医師は事前の患者さま同意の取得、通信機器の適切な設定、そして定期的な状態確認など、具体的な運用基準を遵守する必要があります。
制度に定められた根拠資料(診療報酬算定要領や関連通知)に従って、記録管理を徹底することが必須です。たとえば在宅持続陽圧呼吸療法の場合、情報通信機能付きCPAPのデータ集約により、従来よりも迅速な対応やフォローアップが実現します。この適切な運用は、患者さまの安全性や療養環境の質向上に貢献し、今後の医療サービスの効率化と医師・患者さま双方の負担軽減が見込めます。

在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料(CPAP)における加算の算定基準

在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)での遠隔モニタリング加算は、月150点が基準となり、情報通信機器を用いて指導管理を実施した月に算定が認められます。この点数は、当該期間の月数に応じて算出され、最大2か月を限度とします。加算算定の核心となる要件は以下の通りです。

  • 情報通信機能を有したCPAP機器等を使用し、患者さまの使用状況や治療データを遠隔で確認できること。
  • 月1回以上、当該データに基づき、患者さまへの指導管理(文書による通知も可)を適時に実施していること。

具体的には、患者さまが自宅で使用するCPAP機器からのデータを遠隔地の医療機関が確認し、その情報をもとに治療方針の見直しや生活指導を行うことが求められます。加算の詳細や条件は厚生労働省の診療報酬点数表や関連告示を参照し、制度改定や通知内容を都度確認することが重要です。実運用面では、指導記録の保存といった証跡管理が必須となります。

在宅酸素療法や心臓ペースメーカー管理料での遠隔モニタリング加算可能例

在宅酸素療法や心臓ペースメーカー管理においても遠隔モニタリング加算は可能です。

1. 在宅酸素療法指導管理料(HOPE)
患者さまの酸素飽和度データや使用状況が情報通信機能付き機器を通じて医師に届けられ、状態に変化があれば迅速な対処や指導が受けられる体制を構築します。
・加算点数: 月150点
・算定上限: 2か月を限度

2. 心臓ペースメーカー等指導管理料
心臓ペースメーカーや植込型除細動器(ICD)を使用する患者さまに対し、遠隔データモニタリングと管理体制が認められます。
・加算点数(目安:令和6年度改定後)
 - ペースメーカー:月260点
 - 植込型除細動器(ICD)等:月480点
・算定上限: 11か月を限度(※患者さまの状態等により異なる)

心臓ペースメーカー管理は、CPAPや在宅酸素療法と異なり加算点数と上限月数が高く設定されている点が特徴です。各制度の詳細や実際の取扱いは、厚生労働省が公開する診療報酬点数表や運用通知を参照し、施設内で常に最新情報に基づいた運用が必要です。

オンライン診療導入ガイド

【こんな方におすすめ】

  • オンライン診療の導入を検討している
  • オンライン診療導入の基本的な手順を知りたい
  • オンライン診療を導入したいが、なにから始めたらいいか分からない

遠隔モニタリング加算を適切に算定するための医療施設基準と必要届出

遠隔モニタリング加算を適切に算定するためには、医療機関が厚生労働省の定める所定の施設基準を満たし、所要の届出を行う必要があります。施設基準の中核となるのは、以下の管理体制の整備です。

  • オンライン診療対応体制の確立:
    「情報通信機能を備えた機器」を用いて患者管理を行う体制が必須であり、これに関連するオンライン診療の届出(届出の完了)を行うこと。
  • データ管理・記録体制:
    医師の責任のもと、収集したデータや指導内容を電子カルテ等で適切に記録保管すること。
  • 患者同意の確保:
    患者さまから事前の同意を確実に取得し、書面等で保管すること。
  • セキュリティ・研修:
    データ保護規則や個人情報ポリシーを遵守するための体制、および導入する機器の安全性基準を満たすこと。また、施設側での関連研修を実施すること。

具体的届出内容や点検項目は、厚生労働省の「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」を参考に、常に最新情報に更新しながら算定手続きを進める必要があります。特に届出が完了していない場合、加算は一切認められないため注意が必要です。

算定に必要な機器・通信環境とオンライン診療サービスの選び方

遠隔モニタリング加算を算定するには、情報通信機能を備えた医療機器、およびそれを支える通信環境の整備が不可欠です。機器選定の基本は、データ送信が確実に行えるCPAP、ペースメーカー、在宅酸素療法機器など、算定対象の医療機器であることです。選定においては、機器自体の安全性だけでなく、データ連携時のセキュリティ面の確認が特に重要です。通信環境(インフラ)については、安定したネットワーク回線の確保に加え、データ保存のための専用サーバーまたはクラウドサービス、そしてシステム障害時のバックアップ体制までを整備する必要があります。オンライン診療サービスの選定においては、以下の3点が必須です。

  • 診療報酬対応:
    遠隔モニタリング加算やオンライン診療の算定要件に沿った機能を有していること。
  • ガイドライン準拠:
    厚生労働省の関連ガイドライン(情報セキュリティ等)に準拠していること。
  • 機能性:
    患者さまとの円滑なコミュニケーション機能と、指導内容・データログの確実な記録保存機能を有していること。

コストやサポート体制だけでなく、自院の診療体制に適合するか、将来的な拡張性があるかも比較の重要なポイントとなります。

遠隔モニタリング加算の算定期間・継続条件・月数の注意点

遠隔モニタリング加算の算定は、原則として月単位で行われます。算定対象期間は、情報通信機能付き機器で患者さまの状態をモニタリングし、月1回以上の指導管理を実施した月が対象です。最大の注意点は、対象疾患の患者さまに限定され、かつ対面診療を行わなかった月に加算できるという算定のロジックです。

【主要な疾患の上限月数】
・在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料(CPAP): 2か月を限度
・在宅酸素療法指導管理料: 2か月を限度
・心臓ペースメーカー指導管理料: 11か月を限度(※管理料により異なる)

継続条件としては、以下の体制を確保することが求められます。
・患者同意の継続確認と、データの継続的な取得。
・通信障害などによるデータ取得不能時の代替的なフォローアップ措置。
・状態悪化など必要時の対面診療対応体制の確保。

毎月の点数や報酬額は疾患ごと、管理料ごとに異なるため、上限月数と具体的な算定条件を規定や通知で最新内容を確認し、適正算定を徹底する必要があります。

遠隔モニタリング加算の診療報酬点数・報酬額・算定方法まとめ

遠隔モニタリング加算の診療報酬点数は、基礎となる疾患や管理料によって大きく異なります。報酬額は、これらの点数に診療報酬単価(1点=10円)を乗じて算出されます。算定上限月数と点数を一覧で比較することで、管理料ごとの違いが明確になります。

【参考】厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について 診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 別表第一 医科診療報酬点数表」をもとに作成

算定の基本的な流れは、オンライン診療の届出済み医療機関が、情報通信機能付き機器による患者モニタリングと必要な指導管理を実施し、対面診療を行わない月に点数を申請することです。単なる機器設置やアプリ登録のみでは認められません。現場では、患者説明・同意取得・記録保存といった制度運用の細部に留意し、算定ミスの防止を徹底しましょう。適正な運用のため、医科診療報酬や医学管理等の最新通知を逐次確認し、申請基準の理解を深めることが不可欠です。

遠隔モニタリング加算の導入に必要なステップと導入後の対応マップ

遠隔モニタリング加算の導入には、以下の段階的なステップと、導入後の体系的な対応マップの整備が必要です。

導入に必要なステップ(ロードマップ)

  1. 機器・サービス選定と環境整備:
    自院の診療体制や患者層に適した情報通信機能付き機器(CPAP、ペースメーカー等)を選定し、厚生労働省の基準を満たす通信環境(セキュリティ含む)を整備します。
  2. 必須の手続き(届出):
    遠隔モニタリング加算の算定要件を満たすため、オンライン診療の届出など、所定の施設基準に係る届出を地方厚生(支)局へ実施し、受理を完了させます。
  3. 対象患者の選定と同意取得:
    算定対象となる疾患の患者さまを選定し、制度概要、機器の使い方、加算の算定ルール(対面診療との関係)について十分に説明し、書面等による同意を確実に取得・保管します。
  4. 運営マニュアルの策定と研修:
    スタッフ向けの詳細な運用マニュアルを作成し、データ監視、異常値発生時の連絡フロー、記録保存、レセプト請求処理など、一連の業務に関する定期研修を実施します。

導入後の対応マップとリスク管理

導入後は、患者さまから日々送信されるデータの継続的な受信・分析、状態異常発生時の迅速な対応、定期的なフォローと指導記録の保存を運用フローに組み込むことが重要です。特にCPAP、心臓ペースメーカー、在宅酸素療法といった疾患では、事前に想定されるトラブル(例:通信障害、機器故障)やデータ取得不能時の代替措置なども含めた緊急時対応マップを整備することで、現場の混乱やミスを最小限に抑え、患者さまの安全性を確保できます。関連スタッフへの継続的な教育と、運用後の業務改善の取り組みが、制度活用の質を左右します。

医療機関が注意すべき遠隔モニタリング加算の規約・個人情報ポリシー

遠隔モニタリング加算に関わる医療機関は、高度な個人情報保護と各種規約の遵守が必須です。情報通信機器で収集されるデータは、個人情報や機微な医療情報として、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等に準拠した厳格な管理が求められます。特に以下の点について、社内体制を構築する必要があります。

  • データ保護・管理:
    患者同意の確実な取得、プライバシーポリシーの策定、および第三者への情報提供時の安全対策。
  • 規約・法改正対応:
    診療報酬制度に関する規約を確認し、法改正や行政通知があった際に迅速に内部規程をアップデートする体制。

加算算定の要件遵守に加え、これらのセキュリティ対策の実践は、医療機関の信頼性を維持するために不可欠です。責任体制を明確にし、不明点は厚生労働省通知やQ&Aを参照して適切に対応しましょう。

遠隔モニタリング加算の今後と医療現場の変化についてのまとめ

遠隔モニタリング加算は、高齢化社会と医療資源の効率化という時代の要請に応える形で、今後の医療現場でますます重要な役割を担います。この制度を適切に活用することは、医師の指導・管理負担の軽減や、患者さまの継続的な治療機会の拡大に直結します。本記事で解説した通り、遠隔モニタリング加算は診療所やクリニック経営にとって大きなメリットがある一方で、厳格な算定要件の遵守という課題も伴います。今後も診療報酬の制度改定やオンライン診療技術の進歩に合わせて、管理体制強化、情報共有、Q&Aサポートの活用など、新たな対応が常に求められます。
心臓デバイス管理や在宅酸素療法等を行う医療機関にとって、遠隔モニタリング加算の導入は、診療の質向上と経営安定のための不可欠な戦略です。

\導入の基本が分かる!/
オンライン診療導入ガイド

オンライン診療に必要な機材の準備やシステムの選定についても解説しています。ぜひ、お気軽にダウンロードください。

キーワードで検索

お役立ち資料ダウンロード

オンライン診療導入ガイド

【こんな方におすすめ】

  • オンライン診療の導入を検討している
  • オンライン診療導入の基本的な手順を知りたい
  • オンライン診療を導入したいが、なにから始めたらいいか分からない