運営・開発

【開発の裏側 第1弾】 患者さまと薬局をつなぐオンライン服薬指導システムをつくる

日本調剤 事業開発部
木村 慶彦さん

2020年9月より運用が始まった「日本調剤オンライン薬局サービス NiCOMS(ニコムス)」は、これまでさまざまな機能を追加しながら発展してきました
今回は、「NiCOMS」の開発に至った経緯や思い、今後の展望について、開発当時、サービス運用を担当していた木村さんにお話を伺いました。

肩書・ご活動の状況などはインタビュー当時(2022年5月)のものです。

実際の対談は、感染症対策に万全を期して実施いたしました。

日本調剤 木村さん

患者さまと薬剤師、双方が使いやすいシステムづくり

――開発当初、非対面による服薬指導の実証に携わっていたそうですね。

開発当初は、薬局で処方薬をお渡しするには対面による服薬指導が原則とされていました。しかし、国家戦略特別区域法施行規則により、薬剤師による対面服薬指導義務の特例として、一部の地域で非対面服薬指導(オンライン服薬指導)の実証が実施されていました。そこで当社でも、オンラインで服薬指導を実証することとなり、その担当者として、実際にへき地や離島に足を運び、何度も実証を行いました。
もしかすると、「急にオンライン服薬指導ができるようになった」という感覚をお持ちの方も多いと思いますが、実はこのような積み重ねがあったのです。

――自社でシステム開発しようと決定された大きな理由はありますか?

もともと当社がICT活用に積極的だったこともあり、システムを自社開発する土壌はありました。また、当時は、他社でオンライン服薬指導システムを開発しているところがなかったこともあり、「オンライン服薬指導の実証を行った経験を活かして、患者さまはもちろん、薬剤師にとっても使いやすいシステムをつくろう」という話になり、開発が決定しました。

何が正解か分からない、ゼロからのスタート

――オンライン服薬指導システムの開発で、苦労したことや大変だったことはありますか。

黎明期にゼロからつくるシステムでしたので、何から手をつけていいのか、どういう仕様であれば使い勝手が良いのかを考えるところから始まりました。限られた時間の中で、”利便性”と“徹底的な法令遵守のシステム構築”を両立するための仕組みを考え、まとめていく作業がとても大変だったのを覚えています。
また、当時は、カメラに向かって薬の説明をするということに慣れておらず、システムの動作確認の際に、薬や薬剤情報提供文書などを画面にうまく映すのも一苦労でしたね。

薬の説明書として、薬の名称、効能・効果、用法・用量、副作用などの注意事項が書かれた書類のこと。

――特にこだわったところを教えてください。

とにかく操作を簡便にすることです。使いやすいと感じていただけるように、タップ数を少なくし、スムーズな画面遷移となっています。健康保険証を登録する機能や、患者さまと薬局をつなげる「オンラインMY薬局」機能など、必要な機能が順次追加されていますが、新しい機能を検討する際も、操作の簡便さは意識しています。

薬局がもっと身近な存在となり、「NiCOMS」を使っていただくきっかけづくりを進めたい

――少しずつ、オンライン服薬指導が普及してきたように感じますが、いかがでしょうか。

新型コロナウイルス感染症拡大により、生活のあらゆる場面でオンライン化が進みましたが、オンライン服薬指導の利用はまだまだ少ない印象です。それは、オンライン服薬指導を知らなかったり、使うきっかけがないからではないでしょうか。

きっかけとなるのは、家族や友人といった身近な方からの口コミや、マスメディアのニュースなどがあると思いますが、いつも利用している薬局のスタッフからの紹介も影響力があると思っています。薬局の医療事務や管理栄養士、薬剤師との会話の中で、オンライン服薬指導の認知を広げたり、実際に使っていただくきっかけづくりができればと考えています。

――患者さまに「NiCOMS」のご利用を推進していく中で、課題はありますか。

処方箋の有無に関わらず、日頃から頼っていただける薬局であるとより良いと考えています。
調剤薬局のイメージとして、「処方箋がないと入りづらい」という方が多いと思いますが、実はそんなことはありません。処方箋をお持ちでなくても、来局して気軽にお薬や栄養などの相談ができます。患者さまにとって、薬局や薬剤師をより身近に感じていただけるようになると、ビデオ通話でやり取りをするオンライン服薬指導のハードルがもっと低くなるのではないでしょうか。

患者さまと薬局をつなぐ「NiCOMS」、更なる発展へ

――「NiCOMS」のこれからについて、展望を教えてください。

まずは、多くの方に「NiCOMS」を使ってみていただきたいです。使い勝手の良いシステムを開発・リリースしたという自負がありますが、ご利用者さまのお声をもとに、より質の高いものへと磨いていく余地はあると思っています。皆さまにはぜひ一度お使いいただき、「便利だな」と感じていただけたら嬉しいですし、「もっとこうなったら良いのに」というご意見があれば、それはブラッシュアップにつなげていきたいです。

また、コロナ禍でオンライン化が進み、対面でしかできないと思っていたことが、非対面でもできるようになったものが身近にあると思います。なかには、オンラインだからこそできることもありますよね。例えば、自宅と薬局の距離が遠かったり、外出することが難しい方にとっても、薬局に行くことなく薬剤師とビデオ通話で話すことができ、今までよりも必要なときに頼りやすくなります。
「NiCOMS」が患者さまと薬局をつなぎ、服薬指導に限らず、何か困ったことがあれば気軽に相談できるコミュニケーションツールとしてご活用いただけるよう、これからも機能改善やサービスの向上に努めていきたいです。

プロフィール

木村 慶彦(薬剤師)
日本調剤株式会社 事業開発部
大学卒業後、2005年に日本調剤へ入社。
2018年に当社で行った、国家戦略特区における遠隔服薬指導の実証を担当。実証報告を論文としてまとめ、第23回日本遠隔医療学会学術大会で発表し、優秀論文賞を受賞。