患者さまのニーズの多様化、医療従事者の働き方改革、そして地域医療の維持… これらの課題解決に貢献すると期待されているのが「オンライン診療」です。従来の対面診療に加え、オンライン診療を取り入れる医療機関が増加しています。厚生労働省の調査※1によると、オンライン診療を実施している医療機関の割合は令和2年4月時点でわずか9.7%でしたが、令和4年6月時点では16.0%となっております。
※1【参考】厚生労働省「令和4年4月~6月の電話診療・オンライン診療の 実績の検証の結果」
しかし、オンライン診療は導入すれば必ず成功するわけではありません。患者さまの安全を確保しながら、効率的かつ効果的に運用していくためには、厚生労働省が定めるガイドラインを理解し、適切な運用、システムを導入することが重要となります。本記事では、オンライン診療導入を検討されている開業医の皆さまに向けて、厚生労働省の定めるガイドライン「オンライン診療の適切な実施に関する指針」とオンライン診療システムの導入のポイントを解説していきます。
オンライン診療の適切な実施に関する指針 - 基礎知識と重要ポイント
オンライン診療を実施するにあたり、医療機関は厚生労働省が定める「オンライン診療の適切な実施に関する指針(平成30年3月)(令和5年3月一部改訂)」を遵守する必要があります。
この指針でオンライン診療は
- 患者の日常生活の情報も得ることにより、医療の質のさらなる向上に結び付けていくこと
- 医療を必要とする患者に対して、医療に対するアクセシビリティ(アクセスの容易性)を確保し、よりよい医療を得られる機会を増やすこと
- 患者が治療に能動的に参画することにより、治療の効果を最大化すること
を目的として行われるべきものと定めています。
ここでは、指針のポイントを分かりやすく解説していきます。
対象患者:
・初診は原則「かかりつけの医師」が行う
初診からのオンライン診療は、原則として「かかりつけの医師」が行うことが求められます。
ただし、既往歴、服薬歴、アレルギー歴などの他、症状から勘案して問診及び視診を補完するのに必要な医学的情報を過去の診療録、診療情報提供書、健康診断の結果、地域医療情報ネットワーク、お薬手帳、Personal Health Record(個人の健康・医療・介護に関する情報のこと)などから把握でき、患者さまの症状と合わせて医師が可能と判断した場合にも実施できます。
・対面診療と組み合わせて実施する
オンライン診療が適さない場合は対面診療を実施する必要があります。また、緊急性が高い症状の場合は速やかに対面受診を促すことに留意する必要があります。
オンライン診療の実施が適さない、オンライン診療が困難な症状については、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」の内容を踏えて医師が判断する必要があります。
⽇本医学会連合「オンライン診療の初診に関する提⾔」
オンライン診療の初診に適さない症状 医師⽤
原則
- 問診と画⾯越しの動画のみで診断を確定することのできる疾患はほとんどない。初診のオンライン診療はかかりつけの医師(背景の分かっている患者に対して⾏う場合のみ)初診からのオンライン診療が⾏うことが原則である。
- 今後、オンライン診療を⾏う医師の多くがかかりつけ医となり、専⾨外の症状を診療する場合も想定される。⼀⽅、「専⾨外の医師がどこまで初診を担当して良いか」という議論はオンライン診療特有の問題ではなく、対⾯診療でも当てはまる問題であり、オンラインか対⾯かの判断は「緊急性」および「対⾯による情報量あるいは対応の違い」の観点からすべきものである。
- 「情報量や対応⼿段の問題で初診からのオンライン診療に適さない状態」は、診断のために医療機関における検査が必要な状態、あるいは投薬以外の治療を開始すべき状態、である。
診察方法:
・ビデオ通話での実施
オンライン診療は、リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む情報通信手段を採用することとされています。そのため、ビデオ通話での実施が基本となり、オンライン診療は文字、写真、録画動画のみのやりとりで完結してはなりません。またオンライン診療は、情報通信機器を介して、同時に複数の患者さまの診療を行ってはなりません。医師の他に医療従事者等が同席する場合は、その都度患者さまに説明を行い、同意を得る必要があります。
医師と患者さまが1対1で診療を行っていることを確認するために、オンライン診療の開始時間及び終了時間をアクセスログとして記録するシステムであることが望ましいです。
・必ずしも医療機関で行う必要なし
オンライン診療の実施場所は、必ずしも医療機関内である必要はありませんが、騒音のある状況や通信状況が不安定でビデオ通話が途切れてしまうなど、患者さまの心身の状態に関する情報を得るのに不適切な場所で行ってはなりません。また、第三者に患者さまの個人情報や医療情報が伝わることのないように、プライバシーに充分配慮された場所で行われなければなりません。
上記を遵守することで、産休、育休中の医師や育児により離職中の医師などもオンライン診療を実施することが可能です。
・患者さまは「医療提供施設又は患者の居宅等」のいずれか
患者さまの所在の取り扱いはオンライン診療でも同様に、病院、診療所等の医療提供施設又は患者の居宅等で提供されなければなりません。
この「居宅等」には患者さまの日常生活等の事情によって異なりますが、患者さまの勤務する職場も療養生活を営むことのできる場所として認められる場合があります。また学校や通所介護(デイサービス)事業所なども例外的に療養生活を営むことができる場所として、個々の患者の所在として、オンライン診療をすることが認められる場合があります。
注意点として、オンライン診療による診療行為の責任は原則当該医師が責任を負います。医師は患者さまの所在が適切な場所であるかを確認する必要があります。
個人情報保護:
オンライン診療では、患者さまのセンシティブな情報を取り扱うため、厳格な個人情報保護対策が求められます。
オンライン診療システムを導入する際には、適切に選択・使用することが必要になります。個人情報及びプライバシーの保護に配慮するとともに、使用するシステムに伴うリスク(機密情報の漏洩や不正アクセス、データの改ざん、サービスの停止など)を踏まえた対策を講じた上で、オンライン診療を実施することが重要です。
オンライン診療システム導入 - 失敗しないためのシステム選定
オンライン診療をスムーズに導入・運用するためには、適切なシステム選びが重要です。
システム選定のポイント:
使いやすさ: 直感的に操作できる分かりやすいインターフェース
機能: 予約システム、ビデオ通話機能、決済機能、電子カルテとの連携機能など、必要な機能が備わっている
費用: 初期費用や月額費用が予算に合っている
セキュリティ: 患者情報の漏洩や不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策が万全である
サポート体制: 導入後のサポート体制が充実している
これらのポイントに注意し、貴院にあったオンライン診療システムを選ぶようにしましょう。
まとめ
オンライン診療は、医療現場の課題解決に貢献できるだけでなく、患者さまにとっても、より便利で質の高い医療を享受できるというメリットがあります。 本記事が、オンライン診療導入を検討する医療機関の皆さまにとって、有益な情報となれば幸いです。
当サイトではオンライン診療で高品質の医療サービスを提供する方法をまとめた記事もございます。ぜひ、こちらの記事も貴院でのオンライン診療の実施のご参考にしてくださ
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