運営・開発

【開発の裏側 第2弾】 オンラインでも、対面と変わらないサービスを届けたい

日本調剤 システム第二部
井上 敬太さん

2020年9月より運用を開始した「日本調剤オンライン薬局サービス NiCOMS(ニコムス)」は、おかげさまで登録者数が3万人を突破しました。(2022年5月31日現在)
前回の【開発の裏側 第1弾】では、サービス運用を担当していた木村さんにお話を伺いましたが、第2弾の今回は、システム開発のリーダーを務めた井上さんにお話を伺いました。

肩書・ご活動の状況などはインタビュー当時(2022年6月)のものです。

実際の対談は、感染症対策に万全を期して実施いたしました。

日本調剤 井上さん

自社開発の強みは、自由度の高さ

――自社でシステム開発することを決断した際のお話を聞かせてください。

当時は他社のオンライン服薬指導システムがなかったこともあり、当社にあるノウハウを活かして、自社でシステム開発することを決定しました。
オンライン服薬指導のシステムには、一般的なビデオ通話機能だけでなく、予約機能や決済機能を備える必要がありますし、さまざまな法令や規制への対応が求められます。また、前回木村さんからもお話があったように、患者さまはもちろん、薬剤師にとっても使いやすいシステムをつくりたいという思いがありました。

――自社開発ならではのメリットとして、どのようなことがありますか?

自社開発のメリットとして、開発の自由度が高いことがあげられます。例えば、薬剤師側で患者さまの服薬指導の日時を予約する機能や、健康保険証・初回質問票を登録する機能、カレンダー画面で予約内容を表示する機能など、既成のシステムにはない、便利な機能を提供することができます。
また、ご利用者さまからいただいたお声をもとにした改修や、必要な機能が追加となった際に、開発からサービス提供まで、スピーディーに対応することが可能です。

初めてご利用される薬局で、薬を安全に服用いただくために、副作用や併用薬、アレルギーの有無などについてご入力いただく書類。

スムーズで、わかりやすいシステム設計を心がけている

システム開発 井上さん

――「NiCOMS」を開発する際に、心がけていたことを教えてください。

まず、オンライン服薬指導を受ける一連の流れを、一つのシステムで完結できるようにすることです。予約してからビデオ通話で服薬指導を受け、決済が完了するまでをワンストップで行えるシステムを目指していました。そのために重視したことは、登録の流れや、画面設計です。「どのようにしたら迷わずに操作できるか?」「各機能の使い方はわかりやすいか?」という点で試行錯誤を重ねました。
また、操作がわかりやすく、シンプルな画面設計を心がけています。直感的に使っていただけるよう、画面内の言葉遣いや表現を何度も確認し、アイコンも工夫しました。そのため、「NiCOMS」はスマートフォンの操作に慣れていない方でも簡単にお使いいただけると思います。

オンラインでも、薬局にいるかのような体験を

――「NiCOMS」の開発で、こだわった点を教えてください。

オンラインでも、薬局での服薬指導と同様の体験ができるよう、顧客体験設計にこだわりました。一例として、ご来局されているときと同じ感覚でお会計ができるようになっている点や、薬剤情報提供文書のデータを共有できる機能があります。実際の薬局店舗では、薬剤師と会話をしながらお会計をしたり、患者さまに金額をご確認いただいた上で費用をお支払いいただきます。そこで「NiCOMS」では、ビデオ通話を終了してからではなく、ビデオ通話を繋げたまま、薬剤師と顔が見える状態でお会計を行えるようにしました。
また、ファイル共有機能は、店舗で薬剤情報提供文書をお見せしながら説明する時と近い状況を実現するために搭載した機能です。オンラインの場合は、そのファイルをデータ保存できるというメリットもありますね。

薬の説明書として、薬の名称、効能・効果、用法・用量、副作用などの注意事項が書かれた書類のこと。

試行錯誤、度重なる熱い議論を経て開発したシステム

――システム開発の裏側では、どのような苦労があったのでしょうか?

オンライン服薬指導に関する法令や規制を遵守するための仕組みづくりと、患者さま目線での操作の簡便さを追求し、両立させることが大変でしたね。また、新しい機能を追加したり改修をする際は、何度もテストを行い、システムは正しく動作するか、他の機能になにか影響を与えていないかなどを慎重にチェックします。システム開発の裏側は、実は地道な作業が多いんです。

――特に印象に残っている、大変だったエピソードを教えてください。

「NiCOMS」のシステム開発に際しては、別のシステム構築を並行して進めたり、当社の薬局店舗の営業時間を自動反映する仕組みの整備に苦労しました。ほかにも解決すべき課題はあり、限られた時間のなかで、どのような仕様にすればうまくいくのか、プロジェクトメンバーで議論を繰り返しました。会議室にこもって意見をぶつけ合ったのも懐かしい思い出です。

オンライン服薬指導といえば「NiCOMS」

――今後、「NiCOMS」は、患者さまにとってどのような存在になってほしいと思いますか?

ゆくゆくは、「オンライン服薬指導といえば、NiCOMS」と想起していただけるようなサービスにしていきたいと思っています。
オンライン服薬指導そのものを普及させていく必要はあると思いますが、「NiCOMS」を多くの方に使っていただき、便利さを実感していただきたいです。また、開発当初からこだわっていた、「オンライン上でも、薬局に来ているかのようなサービス」を感じていただけたら嬉しいです。
「NiCOMS」が、患者さまに薬局とのつながりを感じていただける、より身近なコミュニケーションツールになるよう、今後も機能の改善や拡充を図っていきます。

プロフィール

井上 敬太
日本調剤株式会社 システム第二部 2012年に日本調剤に中途入社。
「NiCOMS」の開発プロジェクトではシステム部門のリーダーとして参画。現在は、電子お薬手帳「お薬手帳プラス」やインターネット通販サイト「日本調剤オンラインストア」など、自社アプリやWEBシステムの構築・運用も担当。