新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに数多くの医療機関がオンライン診療を始め、多くの患者さまがオンライン診療を体験しました。医療を必要とする患者さまに対して、医療に対するアクセスの容易性を確保し、より良い医療を得られる機会を増やすためにオンライン診療は有用です。
目次
はじめに
近年、情報通信機器は、その技術の飛躍的な発展とともに、急速な普及が進んでいます。新型コロナウイルス感染症の流行により医療機関を受診することが困難になった患者さまや、宿泊療養施設の患者さまへの医療提供手段として、オンライン診療が活用されました。
2019年末から始まったコロナ禍の間に、インターネット通販やフードデリバリーサービスも普及し、国民にとって「オンラインサービス」はより身近な存在になりましたが、オンライン診療を始めるには、病院・クリニック側での準備も必要になります。 この記事では、オンライン診療の開始に必要な手続きを解説していきます。
オンライン診療研修を受講する
オンライン診療を始めるためには、厚生労働省が実施している「オンライン診療を行う医師向けの研修(無料)」を受講する必要があります。研修を受講するためには、お申し込みが必要です。
厚生労働省の「オンライン診療研修実施概要」のホームページへアクセスし、研修を受講しましょう。研修はすべてeラーニングになっているため、パソコンなどを使ってお好きなタイミングで受講できます。
厚生局への届出 ~情報通信機器を用いた診療に係る基準~
オンライン診療で保険診療を行うためには、各都道府県に設置されている厚生局へ下記2種類の届出が必要です。
「基本診療料の施設基準等に係る届出書(別添7)」
「情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類(様式1)」
※書類は各地方厚生(支)局のホームページからダウンロードできます。
保険医療機関として違反や不当な行為などがないかをチェックする「基本診療料の施設基準等に係る届出書(別添7)」と、当該医療機関に十分な体制が整備されているかどうかを回答する「情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類(様式1)」を医療機関の所在地の地方厚生(支)局長宛に提出してください。
オンライン診療の実施方法を検討、選択する
オンライン診療は、大きく分けて「オンライン診療システム」、「ビデオ通話システム」のいずれかを用いて行うことができます。
「オンライン診療システム」とは、オンライン診療専用に作られたシステムです。ビデオ通話機能以外のサービスも包括的に提供されており、オンライン予約機能、問診票の作成、クレジットカードでの決済機能、処方箋作成などのサービスが含まれています。システムの機能や使い勝手、導入費用、月額利用料、決済手数料などはシステムによって異なるため、しっかり比較・検討して、自院にあったシステムを選択しましょう。
また、「ビデオ通話システム」は一般的にも広く使われているビデオ通話のサービス・アプリを指し、代表的なものにZoomやMicrosoft Teams、Google Meet、FaceTimeなど、患者さまにも馴染みのあるサービスが挙げられます。
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オンライン診療に使用する機材を準備する(セキュリティ、プライバシーに関する注意点)
オンライン診療はインターネットに接続しているパソコンやスマートフォン、タブレットを使用します。画面の大きいデバイスを使用すると、患者さまの状態を視覚面でも確認しやすくなります。(カメラやマイクが内蔵されていないパソコンを使用する場合には、外付けのカメラやマイクを用意する必要があります。)
患者さまも同様の機材が必要になります。携帯電話の場合、フィーチャーフォン(ガラケー)はビデオ通話に対応していないことがため注意が必要です。(スマートフォンでも、古い機種では非対応の場合がありますのでご注意ください。)
なお、オンライン診療は必ずしも医療機関内で実施する必要はありませんが、患者さまの心身の状態の伝達を行うものであり、当該情報を保護する観点から、公衆の場でオンライン診療を行うべきではないとされています。
最後に
アクセンチュア社が2021年に発表した「日本におけるデジタルヘルス活用の現状と課題」レポートでは、デジタルヘルスの利用状況において、オンライン診療の利用割合がグローバル平均23%に対し、日本国内は7%と世界基準ではまだ低い状態です。
【出典】アクセンチュア株式会社 日本におけるデジタルヘルスのいまを基に加工して作成
しかしながら、日本でも電子処方箋の運用が開始されたことで、オンライン診療も活性化する見込みです。
オンライン診療を取り入れている医療機関が少ない今こそ、いち早くオンライン診療の取り組みを開始し、差別化を図ってみてはいかがでしょうか。