2022.09.14活動報告

在宅酸素療法におけるオンライン服薬指導の活用

2022年7月16日(土)・17日(日)に名古屋市で「第3回日本喘息学会総会学術大会」が開催されました。
今回は「喘息診療の進化を捉える」というテーマで、当社から日本調剤 札医大前薬局の店舗責任者・神が登壇し、「在宅酸素療法患者さまに対するオンライン服薬指導の有益性の検討」について発表しましたので、その内容をレポートします。

●学術大会概要

<学会名> 第3回日本喘息学会総会学術大会

<開催日> 2022年7月16日(土)・17日(日)

<会場> JRゲートタワーカンファレンス/WEB(ライブ)開催

<主催> 日本喘息学会

<テーマ> 喘息診療の進化を捉える

●登壇者

神 一樹(薬剤師)
日本調剤 札医大前薬局店舗責任者
大学卒業後、日本調剤へ入社。北海道内の店舗勤務後2021年5月より現職。

―はじめに、在宅酸素療法とは

心臓や呼吸の病気によっては、酸素が不足した状態になることがあります。そんな時、治療法の一つとして「在宅酸素療法(HOT / Home Oxygen Therapy)があります。入院中だけでなく在宅(家庭)でも自ら酸素を吸入することで、肺や心臓への負担を軽減したり、息切れを軽減して歩行距離を延ばせるなど、普通の生活を送ることができるようになります。
しかし、この治療法では、常に酸素供給装置を持ち歩いて生活する必要があり、装置の種類によっては大型で重量もあるため、カートなどに入れて移動しなくてはなりません。そのため、病院や薬局への通院自体が困難となるケースも少なくありません。
また、患者さまは気管支を広げて空気を通りやすくする吸入薬も使用していることが多く、吸入薬の種類によっては使い方が異なり、初期段階で治療を中断してしまう方もいらっしゃいます。

薬局では、アドヒアランス※1向上のためにも、吸入薬を使う患者さまに対して、初めて使用する際の説明はもちろん、継続的な使い方の確認や吸入指導※2を行っています。

※1 患者さまご自身が治療・服薬に関して積極的にかかわること。
※2 吸入薬の使用方法について、文書および練習用吸入器を用いた実技指導を行うこと 。

― 在宅酸素療法を行う患者さまへのオンライン服薬指導

日本調剤 札医大前薬局では、在宅酸素療法中の患者さまにオンライン服薬指導を実施し、対面での服薬指導との比較を行い、オンライン服薬指導のメリットをまとめました。

・対象の患者さま
気管支喘息で在宅酸素療法を行っている北海道在住の60歳代の女性。
糖尿病や脊柱管狭窄症(加齢等の原因で背骨が変形して脊柱管が狭くなり、腰痛や足の痺れが起こる疾患)などの治療のため 、複数の診療科を受診しています。

・オンライン服薬指導の実施に至る経緯
脊柱管狭窄症による腰痛などの症状悪化により、ご本人が薬局へ行くことが難しいときがあり、通院の際はご家族が仕事の合間に送迎していました。また、北海道という地域柄、患者さまがお住まいの地域でも冬は降雪量が多く、患者さまご自身での通院はもちろん、ご家族による送迎も大変な状況でした。
複数の診療科を受診されているため、薬の処方内容も多く、また、薬局でのお薬の準備に時間がかかってしまうことから、お薬を宅配でご自宅にお届けすることも多々ありました。

そこで、かかりつけの薬剤師が、患者さまがご自宅にいながら服薬指導を受けることができるオンライン服薬指導を提案し、外出による感染リスク低減の意味も含めて、実施するに至りました。

喘息学会発表の写真
発表の様子

・オンライン服薬指導と対面の違いを調査
今までは薬局での対面による服薬指導 を受けていた患者さまが、オンライン服薬指導を受けたときに感じるメリット・デメリットについて、聞き取り調査を行いました。

今回使用したオンライン服薬指導サービスは、日本調剤オンライン薬局サービス「NiCOMS(ニコムス)」 です。オンライン服薬指導後の患者さまへの聞き取り内容と判定指標は、厚生労働省の「令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」の「かかりつけ薬剤師・薬局の評価を含む調剤報酬改定の影響及び実施状況調査報告書(案)」(図1、図2)に基づいています。

まず、「ビデオ通話で服薬指導をしてもらうときのメリット」(図1)に関しては、患者さまは、すべての項目にメリットがあると回答しました。特に、「プライバシーが確保されるため、オンラインのほうがしっかりと自分のことを伝えられる」「いつも使っているスマホを利用できる」という点にメリットを感じているようです。

図1

「ビデオ通話で服薬指導をしてもらうときのデメリット」(図2)については、すべての項目について「デメリットではない」と回答しました。かかりつけの薬剤師がオンラインでも対応しているため、安心して服薬指導を受けることができる点が大きな要因と推測されます。
あらかじめ服薬指導を受ける日時を予約しているため、かかりつけの薬剤師も十分な指導時間が確保でき、対面と変わらない服薬指導を行えます。吸入薬の使い方の確認は、患者さまの手元にあるものを用いることで、丁寧でより分かりやすい指導が可能となります。

また、飲み忘れなどによる残薬も、ご自宅で服薬指導を行いながら、その場で確認できるという利点がありました。

図2

今回の学術大会では、在宅酸素療法の患者さまに対してのオンライン服薬指導の活用事例を発表しました。薬局へ行くことが難しい場合でも、現在ではオンライン服薬指導という選択肢があります。

日本調剤では、全ての(一部物販店舗を除く)薬局でオンライン服薬指導が対応可能です。オンライン服薬指導が気になる、利用してみたいという方はお近くの日本調剤へぜひご相談ください。

日本調剤が提供するオンライン服薬指導サービス「NiCOMS(ニコムス)」のご利用はこちらから