2023年1月より全国で運用が開始された電子処方箋。これまで全4回にわたって、電子処方箋の概要や利用方法、海外事例などをご紹介してきました。 今回は、電子処方箋のおさらいと、在宅医療での活用について解説いたします。
【関連記事】
・教えて!電子処方箋 ~その1 電子処方箋とは?~
・教えて!電子処方箋 ~その2 電子処方箋の利用方法~
・教えて!電子処方箋 ~その3 電子処方箋の海外事例~
・2023年1月末より運用開始!電子処方箋の気になる疑問を解決
【目次】
電子処方箋とは
そもそも処方箋とは、医師が、患者さまの治療に必要な薬を選定し、その分量や使用方法、使用期間を文書にしたもので、患者さまに交付されます。従来は紙で発行していましたが、電子処方箋の場合、医師が専用のシステム(電子処方箋管理サービス)に処方箋の情報を登録し、デジタルデータとして活用します。患者さまは処方箋原本を受け取る必要がありません。薬局では、患者さまの同意を得た上で、調剤に必要なデータを取得して薬の準備をするという運用が可能になります。
電子処方箋のメリット
◆病院・薬局間のスムーズな情報連携で、より安心・安全な医療サービスを受けられる
処方箋の内容をデジタルデータ化することにより、医療機関の間で情報共有がスムーズになります。患者さまが複数の医療機関をご利用の場合、薬の飲み合わせなどは主にお薬手帳を確認することや口頭での質問で行っていましたが、それぞれの医療機関で処方・調剤された情報を素早く把握し、薬の飲み合わせなどの確認を正確に行えるようになるため、安全性の向上が期待されます。
また、患者さまご自身でも、マイナポータルなどを通して処方情報やお薬情報を閲覧できます。
◆オンライン診療やオンライン服薬指導がより便利に
処方箋原本が電子データに変わることで、紙のやり取りが不要となり、診察から服薬指導までオンラインで完結します。今よりも、オンライン診療・オンライン服薬指導が利用しやすくなります。また、患者さまにとっては、処方箋原本を紛失しまうリスクもなくなります。
電子処方箋の利用方法
電子処方箋を利用するために必要なもの
電子処方箋の運用は、オンライン資格確認※1の基盤を活用して進められます。オンライン資格確認では、マイナンバーカードで患者さまの本人確認を行いますので、マイナンバーカードを持つことが必須となります。
なお、健康保険証が廃止されるまでは、引換番号※2と健康保険証などでも電子処方箋の応需ができます。
※1 資格確認とは、医療機関・薬局の窓口で、患者さまの直近の資格情報など(加入している医療保険や自己負担限度額など)を確認すること。オンライン資格確認は、マイナンバーカードのICチップなどにより、オンラインで資格情報の確認を行うことをいいます。
※2 引換番号とは、被保険者証番号などと一緒に薬局に提示することによって、薬局が電子処方箋管理サービスから電子処方箋を取得することができる番号です。
電子処方箋の使い方
「電子処方箋って、なんだか難しそう」と感じる方も多いのではないでしょうか。対面で診察・服薬指導を受ける場合は、マイナンバーカードさえあれば簡単に利用することが可能です※3。医療機関に設置されているカードリーダーにマイナンバーカードを置き、画面の案内に沿っていくため、難しい操作はありません。
※3 従来通り健康保険証でも電子処方箋は利用できますが、医師・歯科医師・薬剤師が参照できるお薬情報は限定されます。
【参考情報】
厚生労働省「電子処方せんの利用方法について(国民向け)」https://www.youtube.com/watch?v=rrjDGiCCdlo
ここからは、診療も服薬指導もオンラインで行う場合、どのように電子処方箋を利用するのかみていきます。
<オンライン診療を受ける>
1.オンライン診療を予約し、受診する
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2.電子処方箋を希望する旨を伝え、「処方内容(控え)」を発行してもらう
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3.「処方内容(控え)※4」をご希望の薬局へFAXしてもらう
※4 電子処方箋の内容を紙に印刷したものです。
<オンライン服薬指導を受ける>
ここでは、オンライン薬局サービス「NiCOMS(ニコムス)」を利用してオンライン服薬指導を受ける場合の手順を説明します。
1. 電子処方箋に対応しているご希望の薬局や日時を選択し、オンライン服薬指導の予約をとる
※処方箋の受付方法を選択する画面にて、「処方内容(控え)」を選択してください。
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2.予約した日時にオンライン服薬指導を受け、お会計を行う
※お支払いは、クレジットカードまたは代引きを選択できます。
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3.お薬がご自宅に届く
※通常の処方箋と同様、電子処方箋の有効期限は発行日を含めて原則4日間です。期限を過ぎると受付できませんのでご注意ください。
在宅医療にも、電子処方箋が広まる未来
在宅医療とは
通院や入院ではなく、自宅や有料老人ホームなど普段の生活の場で、診察や治療などを行うことを「在宅医療」といいます。医師をはじめ、歯科医師、訪問看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、訪問介護員(ホームヘルパー)など、さまざまな専門職が連携して定期的に患者さまのご自宅などを訪問し、チームとして患者さまの治療や介護を24時間体制で対応します。
超高齢社会の到来によって、入院による治療から、自宅で治療を継続していく“在宅医療”への移行が進められています。加齢による身体の衰えや病気などによって医療機関への通院が難しくなってしまった際に、入院して療養するのではなく、「病気があっても住み慣れた自宅で自分らしく暮らしたい」という患者さまの想いにも応えられる医療なのです。
在宅医療で電子処方箋が便利な理由
在宅医療における課題の一つとして、処方箋の受け渡しの煩雑さがありました。従来の方法では、医師が訪問診療時にモバイルプリンターを持参して処方箋を発行し、ご家族やケアマネジャーなどがその処方箋を薬局へ提出してお薬を受け取ります。また、別の方法として、病院から薬局へ処方箋をFAX送信し、患者さまのご自宅に処方箋原本を郵送し、薬剤師が患者さまのご自宅に訪問して薬をお渡しすることもあります。どちらの方法にしても、薬局が処方箋を受け取るまでに要した時間の分だけ、患者さまに薬が届く時間が遅くなります。
電子処方箋を活用すると、オンライン上でデータをやり取りできるため、こうした紙の処方箋のやり取りが不要になり、薬のお渡しにかかる時間も短くなります。また、オンライン診療やオンライン服薬指導を利用する際にも非常に便利です。
かかりつけの医療機関が遠方の場合や、医療資源が逼迫した地域にお住まいの場合、ご自宅でスマホやパソコンからオンライン診療・オンライン服薬指導を受け、薬の受け取りまでオンラインで完結しますので、紙の処方箋を扱わなくて良いことは大きなメリットです。
さまざまな場面で医療サービスをより安全に、便利に利用できる電子処方箋。皆さまもぜひ活用してみてください。
*電子処方箋は未対応の医療機関もありますので、詳しくはご利用の病院や薬局へお問い合わせください。
■参考サイト
・府中市「在宅療養ハンドブック」
・公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団
日本調剤が提供するオンライン服薬指導サービス「NiCOMS(ニコムス)」のご利用はこちらから
<日本調剤の在宅医療への取り組みについて>
地域医療チームにおいて、「かかりつけ薬局」として調剤薬局の役割も重要性が増すなか、当社では薬剤師訪問サービスなど在宅医療の取り組みにも力を入れています。
2009年に施設在宅をスタートさせ、施設スタッフや医師・看護師・ケアマネジャーなどと連携して患者さまをサポートしています。また、2010年からは個人在宅にも対応し、がんなどの病気から難病の小児患者さままで、地域のニーズに応じた幅広い在宅業務を行っています。
サービスに関する疑問やご相談は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
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